急性中耳炎

 急性中耳炎は、鼻やのどなどの呼吸の通り道から細菌やウィルスが中耳に感染し発症する疾患です。 「耳管(じかん)」と呼ばれる、中耳と鼻をつなぐ交通路(右図)を介して感染が生じます。 風邪のときに発症することが多いです。
 好発年齢は小児期、特に2歳くらいから小学校の低学年までが主ですが、成人でも発症します。 耳の痛みや耳漏(じろう=耳だれ)が主な症状になります。 乳児では夜泣きの原因となることがあります。経過が長引くと、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎という別の中耳炎に 移行することがあります。さらに長引くと慢性中耳炎となり鼓膜に穴が開いて聴力の低下を起こすこともあります。 治療は抗生物質の内服や点耳、耳洗浄、鼓膜切開による排膿などです。 どの治療を優先し、それぞれをどのタイミングで行うかは医師の考え方によって異なります。 同じ治療方針の医師が経過を観ることが大切です。

  耳管は鼻と交通しているため、
鼻から中耳に細菌やウィルスが侵入

治りにくい中耳炎が増えている

  近年、「治りにくいこどもの急性中耳炎」が増加していることが大きな問題になっています。
なぜでしょうか?それは「耐性菌」という強い菌が増加していることが一つの原因です。 人間が抗生物質を開発して細菌を退治すると、今度は細菌が進化して抗生物質に抵抗力を備えてきます(菌の耐性化)。 抵抗力を持った細菌を退治するために新しい抗生物質を開発すると、しばらくして、さらに細菌が耐性化します。 医療の歴史ではこの繰り返しが起こっています。 その結果、現在では、抗生物質が極めて効きにくい細菌が日常的に存在しています。MRSAとかPRSPなど、たくさんの種類の 耐性菌が存在しています。  一人のこどもを例にとっても、抗生物質を無計画に使いすぎると、菌の耐性化が起こり「難治性の中耳炎」になります。

体内で抗生剤の攻撃を受けた細菌は、融けたり破裂したりして死滅して行きます。しかし、中には生き延びるものがいて、それらは抗生剤の攻撃パターンを学習し、防御機能を備えます
ひとたび耐性化した菌に対しては、同じ抗生物質の効果はほとんどなくなります。また、耐性化した菌は耐性化の情報を次の世代に伝達して増殖して行きます。


抗生剤で破裂死滅した菌
円形のものは
生き延びて耐性化した菌

完全に耐性化した菌。
左隣の青い菌に
耐性化情報を伝達して
いる。(中央のリング)

  最近では中耳炎の治療を専門とする医師が集まる学会などの方針として
1)抗生物質の使い方を工夫してできるだけ耐性菌を作らないようにする。
2)抗生物質をできるだけ使わないで他の治療を行う
などの方法が提唱されていますが、簡単には行かないのが現状です。 世の中にはいろいろな耳鼻咽喉科の医師がいますが、 こどもの中耳炎の治療に精通した医師の元でしっかりとした管理が必要だと思います。
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こどもの中耳炎 鼓膜切開とチューブ

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