滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)

 中耳は耳管(じかん)という「くだ」で鼻と交通しています(右図1)。 呼吸によって鼻から入った空気の一部はこの耳管を介して中耳に循環します。それにより鼓膜の外側と内側(中耳)は同じ気圧に保たれます。両側から同じ気圧で押されることにより、鼓膜は「ピン」と張った状態に保たれます。
 ところが、風邪や鼻炎が原因で鼻がつまっていたり、何らかの原因で耳管の通りが悪くなっていると 中耳への空気の入りが悪くなります。 そうすると鼓膜の内側(中耳)の空気圧不足が起こり、外の気圧によって鼓膜が押され、内側に引っ込み始めます(右図2)。鼓膜がピンと張った状態で最も聴こえが良いので、引っ込んでいると、耳がふさがった感じや聴力の低下が起こります。
  さらにその状態が長く続くと、中耳が慢性的に気圧の低い状態(陰圧の状態)となり、周囲の壁から体内の水分が滲(にじ)み出してきて、中耳にたまります(右図3)。
 中耳に水が滲み出してたまったこの状態を、「滲出性中耳炎」といいます。耳鼻咽喉科で「耳に水がたまっている」と言われた場合は、この状態のことがほとんどで、「水」というのはプールやお風呂の際に外から入ったものではなく、自分の体内から、しみ出した水です。細菌の感染によって中耳に「膿(うみ)」がたまる「急性中耳炎」と違い、痛みはほとんどありません。ただし、中耳に水がたまることによって、鼓膜から内耳へ音が伝わりにくくなるため、聞こえが悪くなります。お子さんが風邪の後から急に、「テレビに近づくようになった」「テレビの音量を上げるようになった」「聞き返しが多くなった」、などということがあれば要注意です。

図1
図2
図3

 痛みはない・・と記載しましたが、中耳に水が長くたまっていると細菌の感染が起こりやすくなり、急性中耳炎を併発して痛みが出ることもあります。滲出性中耳炎と急性中耳炎は密接な関係にあります。また、長く滲出性中耳炎を放置しておくと、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に変化してゆき、将来的に手術が必要になる可能性もあります。
 成人の方で、風邪も引いておらず、鼻炎もなく、飛行機に乗ったりしたわけでもなくて滲出性中耳炎を発症した場合には、鼻の奥の上咽頭という場所に腫瘍が存在することがあります。この場合は早急に治療が必要です。
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