こどもの鼻炎や副鼻腔炎(ちくのう症)について

 子供がいつも鼻汁を垂らしている・・・それをどう考えるかは、親によって違うと思います。 洟垂れ(はなたれ)小僧・・は、昔ながらの「元気の象徴」とも言えますし、逆に現代社会では「非衛生的」とも言えます。

 治療するかどうかは人によって異なって当然です。
鼻汁が多い子供さんの場合、原因として考えられるのは大きく次の3つに分かれるのではないでしょうか?
1)アレルギー性などの鼻炎がある
2)副鼻腔炎(ちくのう症)がある
3)病気ではなく、単に生理的反応である

1)アレルギー性鼻炎は、いわば「体質」によって生じるものです。 くしゃみ・鼻水・鼻づまりが3大症状ですが、どの症状が顕著かは個人によって異なります。 炎症のため鼻の中が常に充血して鼻血を繰り返すこともあります。
 その子にとってアレルギーを引き起こす物質を吸い込むことで症状が出ます。季節によって症状が出たりおさまったりするなら、植物の花粉など、季節性のあるものが原因であることが多いです。 一年中症状があれば、ダニや家の中のほこり(ハウスダスト)が原因であることが多いと思います。ペットが原因になることもあります。 「体質」による疾患なので、薬によって症状を抑えることはできますが「完全に治してしまう」というのは少々困難です。 上手に薬を使用して、症状をコントロールしてゆく・・という考え方をする必要があると思います。 減感作(げんかんさ)療法と言って「体質改善の注射」のような治療もありますが、通院を長く続けなければならない割には 効果がすばらしいというわけではなく、昔に比べると最近は行なっている施設は少ないです。 ただ、症状が深刻なケースでは行なう価値はあると思います。

2)副鼻腔炎(蓄膿症)は、子供にはしばしば認められます。鼻内の診察と、時には通常のレントゲン検査で十分に診断可能です。 成長に伴う顔面や鼻の構造変化によって、自然と改善する場合が多いですので、基本的にはあまり心配しなくて良いと思います。 一方で、青年期に入っても引き続き症状に悩まされるケースもあります。 小学校中学年以上で常に「鼻汁」を垂らしているようなお子さんは、そうなって行く可能性がありますので やはり内服などの治療を継続することをお勧めします。 鼻は構造的に、薬の効果がすぐには現れにくい場所であると言って良いと思います。 薬の効果が得られるまでに時間を要すためあまり強くない薬を、やや長めに期間服用することが必要だと思います。また鼻の中の分泌物を吸引した上で、薬の吸入(ネブライザー)の治療も重要です。当クリニックではだいたい2−3ヶ月をメドに投薬をおこなっています。通院は平均すると週に1−2回程度です。アレルギー性鼻炎が合併しているときには、その薬も併用して行きます。
抗生物質を長期で内服することを推奨する施設もありますが、小児に対しては特別な場合を除いて私は短期間のみしか使用しません。また「画像診断」と称してレントゲン検査を頻繁に施行する施設もありますが、小学生低学年以下のお子さんは、風邪や冷たい空気の影響、空中の塵(ちり)の影響などですぐ症状が変化します。風邪を引いて一次的に鼻が出ているこどものレントゲンを撮ればかなりの率で「ちくのう症」の所見が出ます。またレントゲンの所見が改善したとしても、この年齢のお子さんは、またすぐ同じような状態になります。基本的には成長とともにいずれは治癒してゆきますし、逆にそれまでの幼少期にはどうやっても症状を繰り返します。レントゲンで都度評価することはそれほど重要ではありません。「影響のない程度」とはいえ放射線を使用するので、当クリニックでは積極的には施行していません。もちろん頭痛など重症の症状があるときにはレントゲン撮影を行っています。→ 実際の治療例はここをクリック

3)生理的に冷たい風などの刺激で鼻水が出ます。 汗かきの人とそうではない人がいるように、刺激に対しての鼻水の出方は個人差があります。 このような症状も、ある程度は薬で抑えることが可能ですが、 「生理的」であるわけですから、あまり神経質にならず経過を観ましょう。


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