「のどの違和感・つまった感じ」から考えられる疾患

「のどの違和感・つまった感じ」を起こす疾患はたくさんあります。 考えられるものを一つずつ除外診断してゆく必要があります。代表的なものとして

1)咽頭炎・喉頭炎
2)慢性扁桃炎
3)鼻炎・副鼻腔炎
4)胃酸逆流症
5)貧血
6)咽頭・喉頭・食道・甲状腺などの腫瘍
7)反回神経麻痺
8)のどの神経症

などがあげられます。

 

 のどの縦割り断面図

 のどの違和感は、のど自体だけでなく、鼻・クビ・内科的な問題から生じる可能性があります。

以下に簡単な解説を記します。(病名に下線があるものは、クリックすると疾患のページへ行けます。)

1)咽頭炎・喉頭炎は、文字通り「のどの炎症」です。 風邪のときの急性炎症が長引いて慢性化したり、空気の乾燥やタバコの影響で起こり、頑固な咳の原因となることもあります。 ファイバーカメラでのどの中を観察して診断します。アレルギーが関与する場合は血液検査でわかることもあります。 内服やうがい・吸入治療が有効です。

2)慢性扁桃炎でも違和感が出ます。 抗生物質の内服や、陰窩洗浄(いんかせんじょう:扁桃腺の内部を洗う治療)で軽快します。 詳しくは疾患のページをご覧下さい。

3)鼻に病気があると、鼻汁が下がってきてそれが刺激となって、のどに違和感が出ることがあります。鼻の疾患に準じた診断・治療が必要です。

4)胃酸逆流症:近年の研究でわかってきたことですが、胃の中の胃酸が気がつかないうちに逆流していて、 酸の影響により咽頭や喉頭などの「のど」が障害を受けている場合が意外に多いです。 ファイバーカメラの診察と詳細な問診でおおよそわかります。食習慣や日常生活の改善、胃酸を抑制する薬の内服により治療します。経過が長いものに関しては1−2ヶ月の内服が必要になります。

5)意外にも貧血がのどの違和感を起こすことがあります。血液検査で診断します。

6)腫瘍(できもの)の圧迫によってのどに違和感が生じることがあります。 のどの内部をファイバーカメラで観察したり、超音波検査で甲状腺の検査をします。 必要ならCTやMRIで精査します。食道の内部は胃カメラによる検査が必要です。

7)声帯の麻痺・反回神経麻痺:声帯を動かす神経の麻痺により、声のかすれが生じたり 息苦しい感じが出たりします。神経を麻痺させるような腫瘍やウィルス感染によって生じることが多いです。

8)上に記載された1)から7)のいずれでもない場合は、のどの「神経症」の可能性が高くなります。 「気のせい」というわけではありませんが、神経の過敏により、あるはずのない症状が出たり、軽い症状が極端に強く出ます。 疲労、寝不足やストレスにより自律神経の調子が悪くなると起こりやすくなります。また、自分の周りに病人が出たり、 家族や知り合いが病気で亡くなった直後に、自分の健康に不安を持ち始めたときに起こることも多いです。 病院でしっかりと診察を受け、異常がないことがわかると症状がおさまることが多いですが、頑固に続く場合には 抗不安剤などの安定剤を内服すると有効なことがあります。正直なところ、耳鼻咽喉科医の立場としては、他の病気が見つかるよりも、 この8)であることがむしろ多い印象があります。ただ、6)や7)があるとやはり大変なので、 しっかりと診察や検査を受けることをおすすめします。


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